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「……」
図々しくお願いしていたビビアン様も公爵様の一言で黙りました。
爵位は公爵ですが、国王陛下の甥なので王家の一員です。しかも陛下の側近でもあるので、機嫌を損ねるわけにはいかないでしょう。
「ディアナとフローラ嬢の友人のようだから、どうしても、というならば同席しても構わないよ。どうする?」
二拓を迫られたビビアン様の顔色が見る見るうちに悪くなっていきます。物言いでは二択などなく一択です。拒否されたも同然のビビアン様は
「お心遣い感謝いたします。わたくしには過分な事と思いますゆえ、これにて失礼いたします」
ドレスをつまんだ手に悔しさを滲ませて、それでも公爵令嬢の矜持を保つように華麗なカーテシーをして去って行きました。
彼女の背中を見送り姿が見えなくなったことを確認すると、やっと弛緩した空気が流れました。
「けっこう、しつこかったわね。ランディー様もギリギリのところを攻めたから、乗ってきたらどうしようかと思ったわ」
「あれで乗ってきたら、まだ攻めるつもりだったけどね」
「そうなの? そうならずにすんでよかったわ。あそこで引いて命拾いしたんじゃないかしら」
世間話でもしているように軽く話している二人だけれど、会話の内容は笑えないわ。
「公爵様ありがとうございました。ディアナもありがとう」
命拾いをしたのは私も同じかもしれません。
ビビアン様のあの調子では、いつまでも納得してくださらなかったでしょうから。
二人のおかげで助かりました。
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