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「余計なことをしてしまったかな?」
穏やかでいて飄々としたつかみどころのない公爵様に、何度か口をパクパクさせていたレイ様でしたが、諦めたように大きく大きく息を吐いて目を瞑った後「わかった。ありがとう」と言うに留めました。
本当はなにかしら言いたそうでしたけど、何を言ってもディアナにはかなわない気がします。公爵様にも。
「そろそろ帰らないと。祝賀会も終わるのではないかしら」
「そうだね。ホールに戻ろうか?」
ここに来てからかなり時間が過ぎたような気がします。両親も待っているでしょうし、心配させてしまいます。
「それでは、フローラ。一緒に行きましょう」
ディアナの帰りを促す声にどうするべきかレイ様を見ると
「その方がいいね」
頷いてくださいました。
揃ってホールに戻れば余計な詮索をされてしまうかもしれません。
私はディアナとレイ様は公爵様と別々にホールに戻りました。
幸せだった時間は一瞬で、瞬く間に泡のように消えてしまい、やるせない気持ちはどうしようもなく心の奥に沈んでいきました。
そして、レイ様の話は聞けないまま、夜が更けていきました。
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