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祝賀会は無事に閉会して、帰路に着くためにガタガタと微かに揺れる馬車の中。シートの背に身を委ねて座っていた。
半ば放心状態で夜のとばりがおりた外に目を向けていた。
一体、何があったというの。
ファーストダンスを踊ったわ。
レイニー殿下のリードは紳士的で優雅でターンさえも羽根が生えたように軽やかで、とても素敵で夢の中にいるようだった。
確かにあの時はわたくしたち二人の世界だった。永遠にその時間が続くと思っていたのに、あっけなく幕は下りてしまった。
曲が終わるとダンスエリアから去った殿下は、フローラの元へ。
えっ?
ここは名残惜しそうに、もう一度ダンスに誘う場面ではないかしら?
二人が楽しそうに踊る様子を唇を噛みしめて見つめるしかなかった。
フローラとダンスが終わると次の令嬢の手を取った殿下。フローラも別の子息と踊っていたわね。
次々に子息達がダンスに誘ってきたけれど、丁寧にお断りしたわ。
わたくしはレイニー殿下一筋ですから、見境なく誘いを受けるような尻軽とは違います。
わたくしが身も心も捧げるのは殿下だけ。他の男に指一本だって触らせませんわ。
それに、また殿下に誘われるでしょうから、待っていなくては。
チャンスを逃してはいけない。
きっと殿下も他の令嬢とも踊らないと立場上都合が悪いのでしょう。
わたくしも心を広く持たなくてはいけないわね。
未来の王子妃ですから。
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