40 ビビアンside③

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 喜び勇んで駆けつけようとしたわたくしの目の前に飛び込んできたのは、レイニー殿下だけではなかった。  誰かと話している。女性の声。  その姿には見覚えがある。まさか……フローラ⁈   あっと声が出そうになる口を押えて、信じられない光景にへたりそうになった自分を何とか支えた。  それから、木陰に隠れてジッと二人を観察していた。 『ローラ』 『レイ様』  親し気に愛称で呼ぶ二人。  これは何? わたくしは何を見せられているのかしら? 『隙あり』 『あー。レイ様』 『洗って返すからね』 『あの……レイ様はやめてくださいね』 『えっ?』 『ローラに洗えるなら俺にもできると思うんだよね。まかせて』  ハンカチを取り合ってじゃれ合う二人。  まるで恋人同士のような熱々ぶり。見るからに昨日今日のような間柄ではない仲睦まじい姿。  信じがたい光景に眩暈がした。  目の前で繰り広げられている二人のやり取りがすぐには理解できなかった。
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