40 ビビアンside③

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 二人の声が突然止んだ。  うっかり音を立ててしまったから、周りを警戒しているのかもしれない。  動けば居場所がわかる。息をひそめてじっとしていると、二人が動き出すのがわかった。  見つかる覚悟をしていたけれど、近づくどころか足音が遠くなっていった。  見つからないように、さらに奥に逃げたのね。  密会。逢瀬。  考えたくもない言葉が頭に浮かんだ。  逃がさないわ。  このまま、引き下がったりしない。  フローラ。  レイニー殿下と仲良くするなんて、許さないわ。  まさか……結婚の約束なんて、していないわよね。愛称で呼ぶ二人の姿がちらついて、どす黒い何かが全身を渦巻いていく。  王子妃になるのはわたくしよ。王子妃に相応しいのはビビアン・シュミット公爵令嬢なの。わたくししかいないのよ。  逃がさない。  このままでは腹の虫がおさまらない。一部始終を見てやる。  嫉妬心に駆られ好奇心に駆られ、足音を立てないように気をつけながら、あとを追っていった。
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