41 砕け散る

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41 砕け散る

「ごきげんよう」  別れの挨拶がそこここで聞こえる放課後の停車場。次々と迎えの馬車が到着して、生徒達は帰りの挨拶をして次々と校門を出て行きます。 「ディアナ。ごきげんよう。またね」 「ごきげんよう。フローラ、月曜日に会いましょう」  馬車に乗り込んだ彼女と挨拶を交わして小さく手を振りました。出発した馬車を見送って自分の馬車の到着を待っていました。  今日は週末。  帰路に着く生徒達が心なしかウキウキしているように見えます。明日から二日間のお休み。教室でも休日の予定を立てている生徒達が何人もいました。  私も誘われたのですが、明日はリッキー様の学習日なので丁寧にお断りしました。数週間ぶりの登城なので、ちょっと緊張してしまいます。  そのあとは、レイ様の宮にお邪魔します。今も続いている文通で厨房使用の許可が下りたので、作りにおいでとのお誘いを受けました。    逃げ出したあの日の会話を覚えて下さったのだと思うと、恥ずかしいやら嬉しいやらで自分の感情が追い付いていかないのですが、何はともあれ失敗しないようにしなければ。  材料は事前お知らせしているので準備が整っているとは思うのですが、調理器具などは一応持参しようかしらとか、レシピも数枚用意してシェフ達と一緒に作ろうかしらとか、段取りを考えている最中にもレイ様の笑顔が浮かんできます。  自然と顔が綻んでワクワクと心が弾んできて、早くも明日へと思いを馳せている自分がいました。
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