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祝賀会の出来事を忘れているわけではありませんが、それよりも何よりもレイ様に会いたい。そんな私は浅ましいのでしょうか?
レイ様が好き。
この気持ちに嘘はないけれど、いつかは、もしくは近い将来、終止符を打たなければいけない時が来るかもしれない。
だから、その時まではレイ様を好きでいさせてくださいと私はあの日の星空に祈ったのです。
我儘なのはわかっています、レイ様に甘えてるかもしれない。その時が来るまではそばにいてもいいですよね。
そんな都合のいいことを考えながら、馬車を待っていました。
「フローラ様」
背後から聞こえた声にビクンと体が跳ねました。声だけで誰かわかります。ディアナは先に帰ってしまったから私一人。
逃げ出したい衝動にかられながらも足が縫い留められたように動くことが出来ません。
今日に限って馬車は来ず、姿さえも見えません。
「フローラ様」
もう一度、名前を呼ばれました。これ以上、無視するわけにはいないでしょう。心を落ち着けるように深呼吸してから、振り向きました。
「やっと、気づいてくださいましたのね」
頬に手を添えてにっこりと微笑むビビアン様が立っていました。
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