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私はこくこくと頷きました。
もしかして、レイ様とずっと一緒だと思われたのでしょうか?
ジーと顔を探るような目つきで眺めまわすビビアン様。
怖い。
腰が砕けそうになるのを必死にこらえながら、全身に力を込めました。
怖いけれど、負けてはダメよ。
自分で叱咤激励してなんとか気持ちを奮い立たせます。そうしないと彼女に飲み込まれてしまう。
「まあ、いいでしょう。その言葉、信じますわ。それにしても、いつの間にレイニー殿下と親しくなっていましたの。教えて頂けるかしら?」
えっ……。
レイ様との出会いを聞きたいのですか? 聞いてどうするのでしょう。
「それは……」
「わたくしには教えて頂けないの? わたくしたちお友達でしょう? お友達の恋バナって興味ありますわ。聞いてみたいと思うのは当然でしょう」
恋バナって、私とレイ様のこと? 私の片思いの話を聞きたいのでしょうか?
探るように見つめるビビアン様はおもむろに扇子を取り出すと頬へと当てました。肌に伝うひんやりとした感触。閉じた扇子が鈍色に光っています。
鉄扇?
あの日の折れた扇子を思い出しました。
バキバキッと折れる音が甦って冷たい汗が背中を伝います。
女性の力で折ることは難しいそれを真っ二つに、どれほどの力を込めたのか。想像するだけで背筋が寒くなります。
あの扇子の代わりに鉄扇を。
ギラギラと鈍く光る鉄扇が恐怖を煽ります。それをペタペタと頬に当てる様はまるで凶器のように目に映りました。
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