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一枚は純白のハンカチ。
もう一枚は翡翠色で縁取りした淡いグリーンの綺麗なハンカチ。
隅に百合の花の刺繍が施してありました。
百合は蝋封にも使われています。何度も何度も目にした花です。
レイ様の庭園にも咲いていました。
気づいた時にはハンカチを撫でていました。
鼻がツーンとして目頭が熱くなり泣きそうになります。ディアナがいる前で泣くわけにはいかないので、グッと我慢しました。
「誰からなのか、分かった?」
「……レイ、様?」
「そうよ。レイニーからよ。彼も心配していたわ。早く良くなってほしい。また、元気な姿を見せてほしいって言ってたわよ」
また……次もあるの? 会って下さるの?
我慢していたのに。ディアナに涙は見せたくなかったのに。
瞳いっぱいに膨れ上がった涙は雫となって頬に流れ落ちました。あとからあとから零れる涙は止めることができなくて、見兼ねたディアナが自分のハンカチを貸してくれました。
レイ様。
脳裏に甦ったビビアン様の暴言の数々が放たれた刃となって、心の奥深い場所をえぐっていきました。
レイ様。
あの日踊ったダンスは遠い日のよう。本当は夢だったのかもしれないわ。私は夢を見ていたのかも、ずっと。
泣き止みそうもない私の横で、何も言わずにディアナがそっと寄り添ってくれました。
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