42 リリアside②

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42 リリアside②

「熱も喉の腫れもないようですが、咳が出ているようですので、今日一日様子を見られた方がよいでしょう」 「そうですか。わかりました」  医者の診察結果を聞いていたお義父様が頷いた。 「大事にならなくて良かった。先方にはお詫びをして断っておくから、今日は、ゆっくり休みなさい」 「はい。ごめんなさい」  あたしは小躍りしそうな気持ちを隠して神妙な顔で謝った。やがて一人になった自室でガッツポーズをしたわ。 「ヤッター。よかったあ。テンネル家に行かなくてすんだよぅ。病気さまさまだよね。昨日ずぶぬれになったおかげよね。よい口実ができちゃった」  しばらくは誰も来ないだろうし、布団を蹴飛ばして思いっきり手足を伸ばした。  本当にうんざりしてたんだよね。  何を思ったのか、急に侯爵夫人教育を始めますとか連絡が来て、週末ごとにテンネル家へ行くことになった。  初めのうちはよかったんだよ。エドガーとお茶や庭園の散歩、読書、時には夫人も一緒して、まったりと過ごしていた。これが侯爵夫人教育なのか、ちょろいちょろいと高を括っていたらさ。  ある日、自分の姉だというグレイス侯爵夫人を紹介して、これから本格的に教育を始めるとか言い出してさ。  それから、地獄の日々。  食事のマナーも最初から最後までダメ出し。食べた心地がしないし。  エドガーは少しずつ覚えればいいからって大目に見てくれるのに、グレイス侯爵夫人は考慮なし。容赦なし。
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