3363人が本棚に入れています
本棚に追加
42 リリアside②
「熱も喉の腫れもないようですが、咳が出ているようですので、今日一日様子を見られた方がよいでしょう」
「そうですか。わかりました」
医者の診察結果を聞いていたお義父様が頷いた。
「大事にならなくて良かった。先方にはお詫びをして断っておくから、今日は、ゆっくり休みなさい」
「はい。ごめんなさい」
あたしは小躍りしそうな気持ちを隠して神妙な顔で謝った。やがて一人になった自室でガッツポーズをしたわ。
「ヤッター。よかったあ。テンネル家に行かなくてすんだよぅ。病気さまさまだよね。昨日ずぶぬれになったおかげよね。よい口実ができちゃった」
しばらくは誰も来ないだろうし、布団を蹴飛ばして思いっきり手足を伸ばした。
本当にうんざりしてたんだよね。
何を思ったのか、急に侯爵夫人教育を始めますとか連絡が来て、週末ごとにテンネル家へ行くことになった。
初めのうちはよかったんだよ。エドガーとお茶や庭園の散歩、読書、時には夫人も一緒して、まったりと過ごしていた。これが侯爵夫人教育なのか、ちょろいちょろいと高を括っていたらさ。
ある日、自分の姉だというグレイス侯爵夫人を紹介して、これから本格的に教育を始めるとか言い出してさ。
それから、地獄の日々。
食事のマナーも最初から最後までダメ出し。食べた心地がしないし。
エドガーは少しずつ覚えればいいからって大目に見てくれるのに、グレイス侯爵夫人は考慮なし。容赦なし。
最初のコメントを投稿しよう!