42 リリアside②

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 はああ。  思い出せば次から次に飛び出す貴族の面倒くささ。  にっこり笑って、お茶会や夜会に出席するだけでいいと思ってた。  エドガーに会えるのは嬉しいけど、グレイス侯爵夫人の顔を見ると鳥肌が立つようになったわ。毎回毎回、どうやってさぼろうかと考えるようになった。拒否反応がすごくて足が竦んじゃう。末期症状よね。  そんなこんなで、昨日の恵みの雨。  ポツ、ポツと降り出したときに馬車に乗り込めば、濡れずにすんだんだけど。元気ピンピンのあたしは明日の侯爵夫人教育に行かなきゃならない。  そんな時、あたしの中の天使が囁いた。  濡れたら、風邪をひくよって。  熱があったら、侯爵家には行けない。当然、教育は休みになる。  フフッ。チャンスよ、チャンス。  目の前の停車場からわざと引き返して、人目を避けて、本格的に降り出した雨の中を傘もささずに歩き回ったわ。  そういえば、フローラさんを見かけたような気がする。ずぶ濡れだったけど、彼女も風邪をひきたかったのかしらね。  声をかけようかと思ったけど、彼女の所まで歩いていくのが億劫だったし、あたしに気付かなかったみたいだから、そのまま通り過ぎたけど。  雨に濡れたくらいで簡単には風邪ってひかないもんよね。  あたしみたいに。  
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