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「今までいろんな階級の令嬢を教えてきたけれど、こんなに指導したことが身につかない令嬢は初めてだったわ」
「ごめんなさい」
まるで、わたくしに言われているようで恥ずかしくて身を縮こませた。
「咎めているわけではないわ。事実を述べただけ。あなたの責任だなんて思ってもいないわ」
「いずれは、侯爵夫人になるかもしれない将来の嫁だわ」
「そうね。リリア嬢がその自覚をちゃんと持っていればいいのだけれど、このままでは難しいわね」
そうなのだ。テンネル侯爵夫人になることがどういうことなのか、あの娘は理解していない。国で有数の資産家で多くの事業を持ち、国内での影響は計り知れない。
仕事関係だけでも貴族とのつきあいは広くて細部にわたる。夜会だけでなくお茶会などへの参加や時には主催も務めなくてはならない。
社交は夫人の役割も大きくて重要なのだ。知らないことと覚えないことは同義ではない。その違いを理解しようともしない。
「そうなのよ。困ったことに、その自覚が全然ないのが致命的なのよ」
「ふふっ。そうね。ベス、あなたも苦労するわね。エドガーもリリア嬢にはとことん甘いものね。彼から自覚を促してくれるのが一番効き目があるとは思うのだけども、うまくいかないものね」
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