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「あの調子では、他の講師でも同じことでしょうし、野放しにすれば余計酷くなるかもしれないわね。そうすると、ますます侯爵夫人から遠のくわね」
はあ。わたくしはため息をついた。八方塞がりだわ。よい手立てが思い浮かばない。
フローラさんが婚約者なら、こんなに思い悩むことはなかったのに。侯爵夫人教育など必要ないくらいすべての教養が身についていたし、その上、事業まで携わってくれていた。
今更ながら、手放さざるを得なかった宝は大きかったのだと思い知る。
「どっちにしても講師は見つからないでしょうし、野放しも危険となれば、このままわたくしが続けるわ。それで、どうかしら?」
「いいのですか? お姉様の汚点になるかもしれないのに」
「汚点?」
姉は瞠目して首を傾げる。そんな仕草もエレガントでチャーミング。
「だって、お姉様でも教育できなかった令嬢がいたって、それが妹の嫁であるという汚点までついて、お姉様の評判が落ちるかもしれないわ」
カリキュラムをこなせていない今は、お試し期間だったと言い訳もつく。でも、長くなればそういうわけにもいかなくなる。姉の評判が落ちるのは、なんとしても回避したい。
姉はプッと噴き出した。そして、朗笑を響かせた。
真剣に考えて切り出したのに、姉は笑っている。なぜなのか? わたくしは姉の名誉を守りたいだけなのに。
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