43 テンネル侯爵夫人side②

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「わたくしの講師としての評判を気にかけてくれたのね。ベスは優しいわね。でも大丈夫よ。リリア嬢が実にならなければ、それは、それ。自分の教育の仕方の反省材料にするだけよ。わたくしは人に教えるのが大好きなの。もしも、評判が落ちたとしても、真摯に受け止めてこれからも頑張っていくだけだわ」 「お姉様……」  逆境さえも味方にして、まっすぐ前だけを向いて進んでいく姉。  心が折れそうになっていたわたくしにカツを入れられたようだわ。遅々として進まない現状を考えれば、展望は明るいとは言えない。むしろ、問題だらけ。  でも、姉が頑張ってくれるのなら、わたくしも頑張るわ。 「それに、こういう口実がないとあなたになかなか会えないもの。実は毎週ベスに会えるのを楽しみにしているのよ」  姉はとびっきりの笑顔で微笑んでくれた。 「実は、わたくしも、毎週心待ちにしてました」  忙しい姉に無理を言って講師を頼んだのも、姉に会いたかったからというのも大きかった。小さい頃からわたくしを可愛がってくれた姉が大好きだったから。 「じゃあ、お互い様ね。でも、講師としてちゃんと勤めるわよ。そこは線引きしますからね」 「はい。もちろんですわ。お姉様、これからもよろしくお願いします」  わたくしは晴れやかな気分で姉に頭を下げた。
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