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「そうか」
俺達は何年も前から、ジュラン皇国への渡航を模索していた。現在、国交があるのはフィンディス国のみ。しかも限られた地域でしか行われておらず、ましてやあちらの国に渡るには厳しい審査があると聞いていた。
「永住権か。まずはそこからして厳しいな」
父上が渋い顔をしてため息をもらした。
永住権を獲得するには最低でも五年はその国に住まなくてはいけない。そのうえで仕事の拠点を置いて税金を納めること。その金額や国への貢献具合に応じて永住権の申請条件も変わってくるのだ。他にも細かな規定がある。それをクリアしてやっとスタートに立てる。
「そうですね。ジュラン皇国が徹底して国交を制限してますからね。無理ないかもしれません」
「わかっていたことだからな。しかし、道のりは遠いなあ」
絵画を眺めたまま、遥か先の途方もない夢を見ているような思いに気が遠くなった。
先祖の故郷ジュラン皇国。
一度は訪れたいと願うようになったのは、いつの頃からなのか思い出せないが、絵画を見るたびに懐かしいような恋しいような不思議な思いに駆られていた。
それは父上も同じだったようで、思いを共有してからは、二人の夢となったのだ。
ジュラン皇国の地を踏む。
このための方法をずっと模索していた。
道のりは遠いがいつかきっと……
立ったまま話しているところへ食事が運ばれてくる。俺達はテーブルに着いた。
最近は仕事の関係でこの邸に落ち着いている。
父上は相変わらず旧邸で残り少なくなった日々を過ごしていた。だから、時々、こちらに来て近況を伝えあっていた。
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