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「そういえば、リリアの侯爵夫人教育は上手くいっているんですか?」
「うーん。苦労しているみたいだったな」
「そうなんですか」
うちでも手を焼いたのだから、侯爵家はもっと無理かもしれない。男爵家と侯爵家では格が違う。簡単なマナーや教養ですませられるような身分ではないからな。
「マナー教師などつけなかったのかと言われたが、無理だったと言っておいた」
「その通りですからね。嘘は通用しないでしょうし、見ればすぐわかりますからね」
「テンネル侯爵夫人も講師を雇って教育してくれているようだが、なんにせよ本人のやる気がないようでは、救いようもないな」
呆れたように頭を小さく振って落胆する父上に、俺もため息が出た。
困ったものだな。
ブルーバーグ侯爵家のリヴェール商会との取引もうまくいき、順風満帆といってもいいくらいに仕事も順調なのだが、唯一の頭痛の種がリリアだった。
「夫人教育をしているということは、リリアを次期侯爵夫人にするということなんですかね?」
婚約をした当初は、侯爵側にはそこまでの意欲は感じられなかったのだが、ここに来て教育に力を入れだしたのはどうしてなんだろうか。疑問が湧き上がる。
「その準備があるということなんだろう。毎週末に侯爵家に呼ばれているところをみるとな。しばらく預からせてほしいとのことだから、任せるしかあるまい」
「そうですね。ゆくゆくは侯爵家に嫁入りする身ですから、あちらの申し出に異を唱えることはしませんが。ただ、大丈夫なんですかね? 怠惰的なリリアの事、侯爵家に迷惑をかけていなければいいのですが」
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