44 チェント男爵令息side②

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「かけているのだろうな。カリキュラムも見せてもらったが、成果が出ていないことはうちで見ていてもわかる。テーブルマナー一つ満足に習得できていない」  なんというか、言葉が見つからない。唖然とするばかりだ。  俺はこちらの邸に帰るから、リリアの様子などわからないが、毎日目にする父上はさぞ心苦しいだろう。元平民とはいっても酷すぎるな。  郷に入っては郷に従え。与えられた立場に恥じないように普通は努力をするものだが……  エドガー殿もリリアのどこがよかったのだろう? テンネル侯爵家はジョーカーを掴まされたようなものだな。  我が身内ではあるが、同情してしまう。 「近いうちにテンネル家に面会をお願いしてみようと思っている」 「面会ですか?」 「ああ。ジェフリー、このまま、婚約を続けていいと思っているか?」 「現状を聞く限りはあまり賛成はできませんね。侯爵家の恥になる可能性の方が高いですからね」 「そうだろう? あまりにも酷すぎるからな。いざというときは、婚約を解消または白紙に戻しても構わないと話してこようと思っている」 「それが無難でしょうね。こちらにその覚悟があるとわかってもらえれば、あちらの苦労も少しは減るかもしれませんね。俺も賛成します。それから、面会する時には俺も行きます。父上だけに負担をかけるわけにはいきませんからね。連帯責任ですから」  いつもリリアのことを任せっぱなしだから、こんなときぐらいは役に立たないとな。仕事で苦労するのは厭わないが、身内のごたごたで苦労はしたくないのだが。  本当に、仏心なんて出すもんじゃないな。リリアを引き取って何度目かの後悔に乾いた笑いしか出てこなかった。
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