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再び、椅子に座ったアンジェラ様に姿勢を正すと
「ご相談があるのですけれど」
ドキドキしながら口を開きました。
「相談ってなにかしら?」
「はい。実はリッキー様の教師を辞めようかと思うのです」
「なぜ?」
不躾ともいえる相談に顔色一つ変えずに、聞き返すアンジェラ様。どんな感情を心に抱いていらっしゃるのか、表情だけではわかりません。語り口も穏やかそのもの。
「私事でお休みを頂いた上に病気欠席も致しました。その分、カリキュラムが遅れてしまい申し訳ありませんでした。このようにアンジェラ様やリッキー様にご迷惑をかけるようでは、教師失格です。ですので、他に適任の方に変えて頂ければと思います」
私は椅子から立ち上がるとこれ以上はないくらいに頭を下げました。
「フローラちゃんの気持ちはわかったわ。椅子に座ってちょうだい。話をしましょう」
私の気持ちを受けて下さると思い、椅子に腰かけました。
穏やかな笑みを湛えたアンジェラ様と目が合いました。
お互いに沈黙をしている間、新しい紅茶が運ばれてきます。侍女達が音もたてず素早く茶器を引き、湯気のたった紅茶を目の前に置きました。デザートも違うものが用意されています。テキパキと準備を終えた侍女達は素早く立ち去って行きました。
「どうしてそんなことを思ったの?」
淹れたての紅茶の香りが漂います。アンジェラ様は紅茶を一口飲むとソーサーへと戻してこちらに視線を投げました。
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