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「そう思ってくれると嬉しい。食事は? ちゃんと食べてる? 眠れてる?」
顔を覗き込むレイ様に
「食べてますよ。睡眠も十分です」
健康診断でも受けてるかのような質問を受けて、苦笑いしました。
「よかった。夕食一緒に食べよう。シェフ達も張り切っているって聞いているから、楽しみにしてて」
「夕食?」
「ダメだった?」
怪訝そうにした私を見たレイ様の顔が曇ってしまいました。そういうつもりではなく……私は慌てて否定しました。
「違うのです。夕食もご一緒できるのだなあっと思っただけですよ」
嬉しくて。私のために、時間を取って下さるのが嬉しくて。
「よかった。帰ると言われたらどうしようかと思った」
安心したように息を吐いた様子にトラウマにさせてしまったのかもと申し訳ない気持ちになりました。
あの時の自分の気持ちを打ち明けたら、レイ様はどんな顔をするのかしら。きっと、困らせてしまうわね。
「大丈夫ですよ。夕食楽しみにしています」
これが最後かもしれません。
時間をかけて庭園を回りながら、レイ様との会話を楽しみました。
もう少し、もう少し、ゆっくりと時間よ、過ぎていって。
いえ、時間よ、止まって。
願っても、楽しい時間はあっという間で、無情に過ぎていきました。
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