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空が夕焼けに染まり始める頃、四阿で夕食を楽しみました。
いつもよりも早い時間ではありますが、遅くならないように時間を合わせて下さったのでしょう。
レイ様とおしゃべりしながら、ゆっくりと食べ進めても時間は来てしまうもの。あとはデザートを残すのみとなりました。
目の前に紅茶とブルーベリーのタルトが置かれました。
これを食べてしまうと終わってしまうのね。
香りのよい紅茶にナパージュされたブルーベリーたっぷりのタルト。おいしそうだけれど、これで最後かと思うと手が止まってしまう。
「どうしたの? もうお腹いっぱい?」
じっと動かない私に不思議そうに聞かれました。レイ様には私の気持ちはわからないでしょう。
見つめる瞳にドキドキしていることも少し低音の柔らかい声に聞き惚れていることも、子供のような好奇心をのぞかせる時も、私に向ける優しい笑顔も、レイ様の何もかもが好きな事をレイ様は知らないでしょう。
「とてもきれいなケーキだったので、つい見入ってしまいました」
嘘ではありません。
宮のお抱えパティシエだけあって見事なお菓子です。シェフもそうですが、できれば弟子入りしたいくらいです。
「ローラが褒めていると知ったらパティシエも喜ぶよ」
「シェフの皆さんにもお礼を伝えて頂けたら、とても美味しい料理の数々でしたから。胃に負担をかけないようなメニューを考えて下さったのでしょう? ありがとうございました」
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