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素材選びもそうですが、私の料理には極力油を抜いて消化に良い調理方法でした。できるなら、厨房に行ってお礼を述べたいくらいですが、それはいくらなんでも図々しいお願いでしょう。
最後かもしれないと思うとすべてを目に焼き付けておきたい気持ちになります。
「そこまでわかるんだね。料理人冥利に尽きるだろうな。シェフ達も感激すると思う」
「喜んでくださると嬉しいわ」
最後の晩餐。笑顔で終わりたい。瞳が涙で滲むのを抑えました。
「そういえば、俺にお菓子を作ってくれる約束がまだだったよね?」
ブルーベリータルトの甘酸っぱい美味しさを堪能していた時です。思い出したように尋ねられて、驚きました。
まだ有効だったのですか?
約束した日から数週間経っていますから、忘れていらっしゃると、もうないものと思っていました。
「そうですが……」
「ローラの体調が万全になってからでいいんだ。作って欲しい。どう?」
「……」
「ダメ?」
小首をかしげて上目遣いでこちらの出方を窺うような表情にきゅんと胸が締めつけられる。時折見せる弱気な態度にときめいてしまう。
「ダメではないですけれど、私でいいのですか?」
つい、聞いてしまいます。
これ以上、そばにいてもいいのかしら? レイ様にご迷惑ではないのかしら?
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