45 すれ違う心

18/21
前へ
/774ページ
次へ
「はあ……」  大きな溜息が飛び出します。今日は何回目かしら。  邸の研究室。今日の工程を終えて記録誌を閉じました。リッキー様の語学学習を終えた後、まっすぐに帰宅して研究室に直行して、仕事に没頭していました。  そうしなければ考えてしまうから。   「はあ……」   もう何度目かのため息の後 「まあ、大きな溜息ね。どうしたの?」 「お母様」  開いた扉から顔を覗かせていたのはお母様でした。気づかなかったわ。いつからいらっしゃったのかしら。 「休憩は取れそうかしら? 一緒にお茶でもどうかしらと思って、誘いに来たのよ」 「はい。大丈夫です。今日の分は終わりましたし、ちょうどお茶したいなって思っていたところでした」 「よかったわ。テラスでお茶しましょう」  お母様と連れ立って研究室を出ました。 「珍しいですね。こちらまで足を運ぶなんて、サリーに頼んでもよかったのに」 「そうね。たまにはいいでしょう。運動にもなるし、植物に元気ももらえるわ。ここの植物は生き生きしていて癒されるのよ」 「そうなのですか?」 「実はね。時々、ローレンツと一緒にここを散歩しているのよ」 「ええー。そうだったのですか?」  初めて聞きました。
/774ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3361人が本棚に入れています
本棚に追加