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「彼女達はフローラ様の部屋を掃除してますよ」
「ローラの?」
空いてる部屋をローラ専用のドレッサールームにしている。
「はい。いついらっしゃってもいいようにきちんと整えておくのだと言って、きれいに磨き上げていますよ」
セバスが銀の燭台を磨きながら教えてくれた。侍従のクリスは銀の食器を磨いている。銀製品を磨くのは彼ら侍従の仕事だから、おかしくはないのだが。
「お茶の時間になさいますか?」
「いや、いい」
別に喉が渇いているわけではないから必要ない。姿が見えなかったから聞いただけだ。
ローラがいつ来てもいいように……
「殿下、当たって砕けろですよ。一度や二度振られたからって、すぐに諦めるようでは難攻不落な城は落とせませんから」
励ましたいのか、からかっているのか、それとも両方なのかダンの声がした。
「砕けたら、ダメだし。二度は振られていないし、ローラは城ではない」
シラリとした目で睨んで思わずツッコミを入れる。
「いやだなあ。そのくらいの気持ちで挑めってことですよ」
ダンの隣でしたり顔でうんうんと大きく頷いているアルとジャック。セバスとクリスは銀製品を拭いていた手を止めて、賛成とばかりに小さく手を叩いている。
気持ちは分かるが……側近達の態度に若干身を引いた。
「まさか、殿下が振られるとは思いませんでしたが」
痛いところを突く。俺だって、振られたくなかったし、了承してくれると思っていた。それなのに、その、まさかだった。
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