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「フローラ様を逃したら、一生結婚できないんじゃないですか?」
「別にそれでいい。ローラとしか結婚しない」
彼女しか考えられないし、諦めたくない。
「だったら、頑張ってください。俺達、応援してますから」
次々と突っ込んでくるダンに傷口に塩を塗られたような気がしなくもない。己の不甲斐なさをひしひしと感じてしまう。本人はエールを送っているつもりなのだろう。
側近が味方してくれるのはありがたい。ありがたいのだが。
「殿下、いざとなったら王命という手もございますからね」
柔和な笑顔で二つ目の燭台に手をかけたセバスが言った。
「王命か。その手がありましたね。そっちの方が早いんじゃないですか? さっそく国王陛下に掛け合ってみては?」
「おー。それは名案」
即決な方法を見つけたと思ったのか、みんなの顔がぱあと明るくなった。
相当な乗り気である。俺では心もとないのか、頼りにならないと思ったのか、失礼な態度だな。
俺だって考えないことはなかったから、偉そうなことは言えないが。
「ダン、ちょっと慎みなさい。殿下にも失礼でしょう。あくまでも最終手段ですよ。もしもの時には、このセバスが誠心誠意をもって土下座をしてでも陛下にお願いしますから、何なら、この役職と引き換えにしてでも……」
布巾を握りしめた手が興奮のためかプルプルと震えている。
ガバっとソファから起き上がると
「セバス。お前も慎んでくれ」
俺は慌ててセバスを止める。
力説しすぎだ。そのうち、命を……とか、言い出すんじゃないか。
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