47 揺れ動く気持ち

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47 揺れ動く気持ち

「フローラ、卒業後はどうするつもりだね」  休日の午後、居間で家族団らん中にお父様に尋ねられました。  最終学年である私はあと数ヶ月で卒業を迎えます。以前なら結婚することが決まっていたので、考えることはなかったのかもしれません。  今は、婚約者もいない、結婚の予定もありませんから、身の振り方を考えなくてはいけないのでしょう。  一瞬、レイ様が思い浮かびましたが、頭から振り払いました。  私からお断りしたのに、心の内に思いを秘めることさえ、烏滸がましいことでしょう。 「出来れば、このまま研究を続けたいと思います。ダメでしょうか?」 「ダメではないよ。フローラの思うようにしたらいい」  お父様の言葉にホッと胸を撫で下ろしました。お父様の隣ではお母様が微笑んでいます。  卒業すれば研究にもっと時間を費やせるし、文献なども読む時間が増えます。人の役に立ちたいと思う気持ちは変わりませんから、両親が賛成してくれるのはとてもありがたいことです。 「それでなんだが、研究をするにしても、うちでは手狭だと思うのだが、どう思う?」 「手狭、ですか?」  敷地内に温室と研究棟ですから、ある程度やりたいことも限られてくると言えばそうなのですが、それもやり方次第だと思って今日までやってきました。  広ければ、研究の幅は広げられるとは思いますが。
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