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「お母様」
「そうだ。一人でなんでもやる必要はない。土地もいくつか候補があるし、相応しい物件を選んで決めればいい。人選も募集をかければ集まってくるだろうし、面接して決めればいい。お金の事なら研究が軌道に乗れば利益も生むだろうから、気にせずに自分のやりたいことをすればいいんだよ」
「そうよ。お父様の言う通りだわ。わたくしも応援するわよ。あなたの研究がどれだけこの国の役に立っていることか。あなたがとても誇らしいわ。わたくしたちの援助はあなたの功績に比べればほんの一助。この国に生まれた人間として少しでもあなたの研究の役に立てたら嬉しいのよ」
「お父様、お母様。ありがとうございます」
両親の愛情に包まれて胸が熱くなります。泣きたくなるのをこらえて笑顔を向けました。
私の思うままの気持ちを汲み取って協力してくれる両親に頭が上がりません。
「結婚、とかはいいのですか?」
恐る恐る尋ねました。
貴族の令嬢として生まれたならば、政略だろうと結婚は必須。当たり前の事です。親に決められても文句は言えません。
「結婚したいのかい? もしかして誰か相手がいるのかい?」
お父様が目を見開いて驚いたような問いかけに
「い、いえ……そういうわけでは……」
私はあたふたと否定しながら頭を左右に振ります。
語尾はごにょごにょと濁してしまいましたが。自分で話を出したとはいえ、顔が微かに熱を持ったのがわかりました。
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