47 揺れ動く気持ち

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 レイ様を目にした途端、私は一歩下がりました。  ここにいてはいけない。いる資格もない。帰らなくては、私の役目はここまで、そう思ってリッキー様に従ったのですから。 「お待ちしておりました。さあ、フローラ様。中へどうぞ」  部屋に促したのは相好を崩したセバス。 「いえ、私はここで。リッキー様をお連れしただけですから」  中に入ることを固辞していると部屋の奥で、エルザ達がエプロンで目頭を押さえて涙ぐんでいる姿が目に入りました。  護衛騎士達は拳を握って小さくガッツポーズを繰り返していて、侍従達は喜悦の表情で微笑んでいます。  理解しがたい奇妙な光景に気を取られている隙に、ササッと歩み寄ってきたケイトとルーシーに腕を組まれました。離さないとばかりにガッツリと。 「さあ。フローラ様、お召替えを致しましょう」  エルザの気合の入った声に二人の侍女も頷きます。 「えー。ローラおねえちゃん、どこに行くの?」  レイ様に抱っこをせがんでいたリッキー様が不満げな声を上げました。  レイ様は無言でこちらを見ています。  私の訪問が突然過ぎたのか状況を把握できていないような表情。私は気まずくなって目を逸らしました。 「リチャード殿下、お着替えに行くだけですよ。しばらくお待ちくださいね」 「リチャード殿下。今日のおやつはメロンのショートケーキです。すぐにお持ち致しますが、いかがですか?」  エルザの後に間髪入れずセバスが口を挟みます。 「メロン! やったー。食べるー」  キラリンと目が輝きました。曇っていた表情がメロンの一言で一変したリッキー様。
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