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「ローラおねえちゃん。こっちだよ。早く来てー」
西の宮の庭園。
いち早く飛び出していったリッキー様が手招きしています。
おやつを食べ終わったリッキー様の次の興味は庭で遊ぶこと。ケーキを二個も平らげたのですから、運動も必然でしょう。
それはよかったのですが、帰る素振りを見せた私を見逃さず、リッキー様に『一緒に遊ぼう。ローラおねえちゃんと遊びたい』と強請られて、懇願を振り切ることが出来ずに庭園に来てしまいました。
こんな時、割り切れる性格だったらよかったのにと、優柔不断な自分が恨めしくも思ってしまいます。
隣にはレイ様。
呼ばれたのを幸いに私はリッキー様の元へと足早に歩いていきました。
「ローラ。あまり急ぐと転ぶよ。気をつけて」
背後から気遣う声が聞こえます。
振り切れずとどまることを選んでしまったのは、レイ様に未練があるから。ここにいてはいけないと思うのに、隣で微笑んでいるレイ様が好きだから。ローラと呼んでくれる愛称が特別だから。
「大丈夫です」
いつもと変わらない態度に安心して嬉しくて、でも、どこかもの悲しくて……
「ほら、見て。お魚がいっぱい」
リッキー様が興味津々に川を覗き込んでいます。
幾種類もの魚たちが縦横無尽に泳ぎ回っている様は壮観です。
マロンも川の淵に来てジーと眺めている姿はリッキー様と同じ。動き回る姿を目で追っています。
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