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「マロン。魚はお前の獲物じゃないからな。獲るなよ」
いつの間にか追いついたレイ様が注意をしていますが、当のマロンは聞こえていない様子。物珍しいのか魚たちに目が釘付けになったまま、その場を動こうとしません。
「やっぱり、猫だなあ」
ちょっと、困ったようにつぶやいたレイ様は
「レイおにいちゃん。この魚、なんという名前?」
次々と指さすリッキー様に答えていました。
川に沿って場所を変えて歩きながら、ポツリポツリと話をします。ローラと呼ばれるたびに胸が熱くなって恋しさがこみ上げてきます。
プロポーズを断ってしまった私が今更と思う気持ちもあって、遠慮がちになってしまう。相応しい方は他にもいる。そう思う自分もいて、頭の中が混沌としている。
「うわっ」
レイ様のひときわ大きな叫び声が聞こえたと思ったら、一目散にマロンがレイ様の身体を駆け上り肩に乗っていました。おっかなびっくりといった体で目の前を凝視しています。
「でっかいの釣り上げたな」
「マロン、すごーい」
感心した声に振り向けば、大きな鯉がぴちぴちと尾びれを動かして陸の上で跳ねています。
勢いで水滴が飛び散っていますが、お構いなしに目を輝かせて鯉を眺めているリッキー様。マロンは早々に避難して、レイ様の肩の上で怯えています。
そばで控えているエイブや護衛騎士達の忍び笑いが漏れ聞こえて、思わぬ愉快なハプニングに笑いの輪が広がって、和やかな雰囲気になりました。
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