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「早く水に戻してやらないとかわいそうだぞ」
「うん。わかった」
そういわれてリッキー様とエイブが、袖をめくります。跳ね回る鯉を捕まえるのに少々手こずりながら、川へと戻しました。
水を得た魚というのはこういうことを言うのでしょう。本来の居場所に戻った鯉は水の中を確かめるように数回ゆっくりと旋回して、やがて川の奥へと消えていきました。
「ふう」
大仕事を終えたとばかりにリッキー様が額を手で拭っていました。その仕草が愛くるしくて笑みを誘います。
「リッキー、頑張ったな」
レイ様から労いの言葉をもらったリッキー様は満足そう。目を白黒させていたマロンはまだレイ様の肩の上。
「まったく。マロンも油断ならないな。興味津々だったし、ちょいちょい、水をつついてたのは見ていたから、悪い予感はしてたんだ」
マロンの頭を撫でるレイ様。
高みにいるマロンは何事もなかったかのように、手のひらに頭をスリスリして気持ちよさそうに、ゴロゴロと喉を鳴らしています。
「マロンすごかったね。あんなに大きい魚を捕まえるなんて思わなかったもん」
「そうだな。本人が一番びっくりしてるんじゃないか。こいつの驚きようを見たら捕まえるつもりはなくて、運よく爪に引っかかって釣り上げた形になったのかもな」
未だに下りないところをみるとその通りなのかもしれません。
興味本位での行動が思いがけず大物を釣り上げてしまった。マロンより大きかったから手に負えなくて逃げ出したのでしょう。
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