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「ローラおねえちゃん? レイおにいちゃんのこと、好き?」
再びの問い。リッキー様の純真さに絆されたけれど
「好、き……です」
男女の愛情だけではないと意気込んでみたのに、出てきたのはごにょごにょと、か細い声。俯いたまま、途切れ途切れに言うのがやっと。
そんな曖昧な答えでも、顔を上げてみればレイ様の朱に染まった顔が目に映って、動揺してしまいました。
勘違いされているような、本当は勘違いではないのだけれど、でも、好きと言ったのは、そんな意味ではなくて……こんがらがる頭で必死に心の中で言い訳をする私。
「あ、あの、いえ……」
どう説明しようかと狼狽えていると
「よかったね。レイおにいちゃん。ローラおねえちゃんは、レイおにいちゃんのことが好きなんだって。じゃ、僕、帰るね」
ごにょごにょと途切れ途切れの言葉をしっかりと拾ったリッキー様は、満足した面持ちでスッキリとした口ぶりで告げると、鮮やかに踵を返して駆け出していきました。
あっという間の出来事について行けず、立ち尽くしか術がありません。
「おい、リッキー。ちょっと、待て」
「いやだよー。ローラおねえちゃん。また、遊ぼうね」
リッキー様が手を大きく左右に振りました。それから、もう一度くるりと向きを変え走っていきます。
「リチャード殿下。お待ちください」
マロンを抱き上げたエイブが慌てて後を追いかけていきました。
残されたのはレイ様と私。
一陣の風が吹き抜けたような脱力感に襲われて、しばらく動けませんでした。
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