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そうよ。
こんなことをしている場合ではないわ。
正気に返った私はリッキー様の後を追うことにしました。彼についてきたのだもの。いつまでもレイ様の元にいるわけにはいかないわ。
「レイ様、私も帰ります。長々お邪魔してしまい申し訳ありませんでした」
礼をして帰ろうとすると呼び止められました。
「ローラ、もうしばらく、ここにいてほしいんだ」
「でも、リッキー様もいらっしゃいませんし、私の役目も終わったと思うのですが」
招待されたわけではなく、勝手に連れられてきたようなもの。とどまる理由もありません。それに、さっきの出来事もあって、早くこの場を離れたい気持ちもあります。
「本……図書室に新しい本が入ったから見てみない? リッキーにも役に立ちそうなのがあるかもしれないから。よければ、教材に使ってほしいんだ」
「図書室……」
リッキー様のため? 教材を探していたことを覚えて下さっていたのかしら? 良いものがあれば使わせていただけるのは嬉しいけれど。レイ様を頼っていいの? 甘えていいの?
「ローラ、そんなに難しく考えなくていいと思うよ。リッキーのために本を選びに行く。それでいいんじゃないかな」
「レイ様」
難しくって、ややこしく考えすぎなのかしら。
迷って困っていたけれど、レイ様は割り切っていらっしゃるようにも見えました。あくまでも仕事の内だと。教材を提供するために案内するのだと。
「わかりました。よろしくお願いします」
義務的な物言いに寂しさも感じたけれど、けじめはつけないといけませんものね。
何にも知らなかったあの頃に帰りたいと思ってしまいました。何のためらいもなく手を委ね、体を委ねられたあの頃に……
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