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誰もいない二人だけの空間。
パラパラとページをめくる音が微かに聞こえます。
会話はないけれど、同じ時を過ごす贅沢な時間。それだけで自分の心が満たされているように感じました。
五冊ほど良さそうな本を選び出し、残りの本を書架に返して閲覧室へ戻ってくると、ゴトッと物音がしました。
静寂な室内に殊の外大きく響いて、音のした方に目を向けると本が床に落ちていました。
いつの間に寝てしまったのか、ソファに横たえたレイ様。睡魔に襲われ力の抜けた手から本が零れ落ちてしまったのでしょう。
私は本を拾い上げてテーブルの上に置きました。
日が傾き始めたのか深く差し込んだ日差しを浴びてレイ様は眠っています。暖かいとはいえ、こんなところでうたた寝をしていたら風邪をひいてしまうかもしれません。
「レイ様、起きてください。ここで、寝てはダメですよ」
跪き、声をかけます。
「……」
返事はありません。微動だにしないレイ様。ぐっすりと寝ていらっしゃるみたい。
「レイ様。レイ様」
声をかけても起きる様子はないので、仕方なく肩に手をかけて少しだけ揺さぶってみましたが、熟睡しているのか瞼一つ動きません。
疲れていらっしゃるのかもしれません。
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