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閉じた瞳には長いまつ毛。スッとした鼻梁。弧を描いた艶のある唇。精巧なお人形のように整った容姿は寝顔も美しい。
起こすことを諦めてしばし見惚れてしまいました。
頬にかかった髪の毛をもとに戻そうとそっと触れると、頬の滑らかな感触に心が震えドキドキしてきました。
今日に限って人払いされたのか誰もいない室内。
今だけ……
起きる気配のないレイ様に、魔が差したのかもしれません。
呼んでも聞こえるのは規則正しい呼吸だけ。
震える手で頬に触れる。
いけないことをしているのはわかっているのに、止められなくて。
『大好きだよ。愛している』
先ほどのレイ様の言葉が甦りました。
真剣で熱を孕んだ瞳が忘れられなくて、伝えられずにはいられませんでした。
今だからこそ言える。自分の本当の気持ちを……熟睡している彼はきっと知らない。だから、今だけ。私の気持ちをのせて。
「レイ様が好き。大好き」
レイ様の寝顔を見つめながら、そして、吸い寄せられるようにレイ様に口づけました。重ねた唇はほんの刹那。シトラスの香りが鼻を掠めていきました。
大それたことをしてしまったと気づいた時には、唇を重ねたあと。
柔らかな感触がいつまでも私の唇に残っていました。
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