3363人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに身分で言えば王族との結婚は相応しいと思う。それにビビアンは品格も教養も持ち合わせている。王子妃として何の遜色もない。わしらも望んでいなかったかといえば嘘になる。しかし、それでも叶わぬ事はあるのだよ」
「叶わぬとは?」
嫌な予感しかない。
お父様は苦渋の色を滲ませてわたくしを見つめている。
「ここだけの話だが、レイニー殿下には心に決めた令嬢がいらっしゃるそうだ」
心に決めた?
まさか……フローラ?
思い出したくもない顔が咄嗟に浮かぶ。でも、違うかもしれないと思い直して、浮かんできた顔を振り払った。
一縷の望みをかけて聞いてみる。
「その令嬢とは、どなたなのですか?」
「名前は明かされなかった。まだ発表する段階ではないようでな、もうしばらく待ってほしいとのことだった。両陛下もご承知のようだから、我々には報を待つより他はない」
「それならば、わたくしかもしれないのでは?」
そうよ。
名前がわからないのであれば、自分の可能性だってあるのではないかしら。だったら、早々に結婚相手を決める必要もない。
せめて、名前が明かされるまでは猶予があるはずよ。わたくしにもチャンスはあるわ。
最初のコメントを投稿しよう!