48 ビビアンside④

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「残念だが、それはないんだよ。ビビアンの期待を打ち砕くようで心苦しいが、それは限りなくないに等しい」  お父様の容赦ない言葉に望みを託したわたくしはどん底に突き落とされる。   「どうして、そんなことがわかりますの? もしかして、名前がわかっているのですか?」 「いや、それはわしたちにもわからない。正式に発表できないからと陛下が硬く口を閉ざしてしまわれたからな。憶測ではあるが、両陛下もご承知の上で、結婚相手として相応しいとの判断であれば、相手の令嬢の身内にはすでに打診がいってるはず。先に別の婚約が成立すれば取り返しがつかないからな」 「そんな……」  「わしとしても、こんな展開が待っているとは思ってもいなかった。二人の王子殿下の時は複数の候補者から選ばれていたからな。今回もそうだとばかり思っていた。議会でも候補者の名前は出ておった。その中にはビビアン、そなたの名前もあったのだよ。しかし、水面下で結婚の話が動いているとなると……」  沈痛な面持ちで言葉を途切らせたお父様の眉間には、深い皺が刻み込まれていた。
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