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「けれども、まだ決定したわけではないのでしょう?」
なりふり構っていられない。
お父様を困らせたいわけではないけれど、どうにかできないかと懇願してみる。
相手がフローラだったとしたら、まだチャンスがあるのではないかしら。
傷物令嬢ですもの。
わたくしとどちらが相応しいかと言えば、一目瞭然のはず。
お父様だって大臣。味方だっているはずだわ。重鎮達の協力があれば覆せるのではないかしら。
「レイニー殿下は第三王子。王太子殿下ほどの重要な立場ではないからな。本人に任せているともおっしゃっていた。名前が明かされたらよほどでない限り、議会でも承認されるだろう」
「……」
なんて、無力な……
膝の上で扇子を握りしめる。
「よほどとは?」
「身分が低い令嬢か、素行に問題があるか。どなたなのか聞いてみないと判断はつかないがね」
素行。
婚約破棄もそれにあたるかしら? 世間では傷物令嬢と揶揄される存在ではあるけれども。
一縷の望み。まだ、つながっているかもしれないわ。
「そういうわけだ。ビビアン、この婚約はわしらとしても進めていきたい。できれば早めに決めてほしい。色よい返事を待っているよ」
お父様に同意するようにお母様も頷いた。
両親の間では侯爵家の三男との婚約はまるで決定事項のようだった。
誰もわたくしの気持ちをわかってくれない。わたくしの味方はいない。わたくしはレイニー殿下と結婚することを望んでいるのに。わたくしこそが相応しいのに。
なぜ、思い通りにいかないの。
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