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仕方なく見てみる。
黒い髪は短く切り揃えられて、瞳はサファイアブルー。
顔立ちは悪くないというよりも整っている。凛々しい眉がきりっとしていて、全体の雰囲気は雄々しい。騎士にぴったりの容貌だった。
こういう顔が好きな人にはモテるのではないかしら。
「そうですね。とても美男子ですわね」
わたくしの好みではない。レイニー殿下のような中性的で柔和な美貌が好きなのよ。
「そうでしょう。容姿もよくて優秀な方だから、とてもモテるんですってよ。でも浮いた噂一つないんですって。とても硬派な方なのね」
「まあ。そうなのですか? 騎士と言えば、交際関係がいろいろと活発だと聞きますが、三男は真面目な方なのですね」
令嬢に人気な職業のせいか、軽薄な男性も多いと聞くわ。
剣術大会などイベントがあるときは令嬢達が押し寄せるのだとか、わたくしは行ったことはないけれど、よく話題になっている。
それに、人気の騎士には大勢の取り巻きもいると聞く。とにかく騎士団には良いイメージはない。
「ビビアンったら、そんな噂、どこから聞いてくるの? でも、そういう噂のある中でも真面目な方ということが知れてよかったと思うわよ? そんな方なら結婚しても妻一筋に大切にしてくれるのではないかしらね」
なにを言わんとしているか察したのか、口元をひくひくと引きつらせながらお母様が言った。
「そうですね」
顔色を変えず棒読みで二口目の紅茶を飲んだ。
言いたいことはわかるけれど、心にちっとも響いてこない。
「ねえ、ビビアン。三男というのは失礼じゃないかしら。名前を呼んだ方がいいのではなくて?」
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