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部屋に戻ると一気に力が抜けて、一人がけのソファにどさりと体重を預けた。深く沈み込んだソファの肘掛けに肘をつくと額に手を当てる。
「なぜこんなことに……」
昨日の出来事で天国から地獄に落ちた気分。
祝賀会の両親のあの浮かれようを思い出して、苦々しく唇を噛みしめる。
あんなにお似合いだと、わたくししかレイニー殿下のお相手はいないなどと散々上げておきながら、昨日のあの仕打ち。
両親の言葉を真に受けて、その気になっていたわたくしがバカみたいじゃないの。
わたくしは愚かだった。
レイニー殿下の結婚は既定路線で時期が来れば、王家から話が来るものだと勝手に思っていた。
でも違ったのね。待つばかりではダメだったのだわ。
わたくしも積極的に動くべきだった。
そうすれば、フローラのように偶然でもレイニー殿下と出会えたかもしれない。同じ場所にいたのに、わたくしは出会えなかった。
せめて、リチャード殿下の語学教師を強制的に代わってもらえばよかったのかもしれない。
登城なんて簡単にできるわけはないから、王太子妃のアンジェラともっと仲良くしておけばよかったわ。そうすればレイニー殿下を紹介してもらえたかもしれない。
待っているばかりでは物事は進展なんてしなかったのよ。
今更ながら、いくつもの後悔が押し寄せる。今となっては後の祭り。
本当になんて無力なのかしら。
何の力も持っていないわたくしは、市井に放り出されたら生きていくこそすらできない。両親に本当の意味で反抗なんてできるはずもない。
婚約を阻止できる方法は何かないのかしら。
侯爵家から断ってもらうのが、一番いいのに。
ああ、どうすればいいの。
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