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「ディアナ。元気だったかしら?」
こんなところで会うなんて、一人静かに時間を過ごすはずだったのに、心の中で舌打ちをしながら、にこやかに応対する。
フローラも一緒だったわ。
テーブルの上には飲み物と教科書とノートに筆記用具。課題でもしていたのかもしれないわ。真面目なこと。それとも一人では難しい過ぎてディアナとやっているのかしら。
フローラの顔を見たら悪意しか浮かんでこない。
「ええ。おかげさまで」
「フローラ様はお元気だったかしら?」
「はい」
身を縮こませてビクビク、おどおどと返事をするフローラには気品も威厳もない。ただ、殿下に甘えて守ってもらうだけが妻の仕事ではないわ。
レイニー殿下と戯れていた姿が頭をよぎる。
勉強が取り柄の地味令嬢と思っていたけれど、案外殿方に取り入るのがうまいのかしら。
清純そうな顔をしてどんな手管を使ったの?
知らぬ間に殿下の懐に入り込んだフローラに、嫉妬が煮えたぎるようにふつふつと湧いてきて、フローラをねめつけた。
こうでもしないとわたくしの気持ちがおさまらない。これくらいでは足りないくらいだけれど、他に手段は見つからない。
でも、威力は充分よね。
わたくしに威嚇されたフローラは見る間に血の気を失ってカタカタと震えだしたわ。もう一度、ディアナがいない隙に呼び出して、脅してみようかしら。
いいえ、そうじゃないわ。
自らレイニー殿下から手を引いてもらうようにお願いしてみればいいのよ。二度と会わないようにね、お願いするの。
そうだわ。
その代わりロジアム侯爵家の三男を紹介してあげるというのはどうかしら。わたくしよりもお似合いだと思うわ。
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