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皮肉を投げつけると悲愴感を漂わせて俯いてしまったわ。だって、本当のことだもの。いい気味よ。
傷物は傷物らしく、おとなしくしておけばよいのよ。レイニー殿下の周りをちょろちょろとうろついて目障りなのよ。
「そういう意味ではなかったのですけれど。結婚は縁でもありますし、相応しいお相手はおりますわ。ねっ、フローラ」
ディアナの言葉にポッと頬を赤く染めたフローラ。
「どういうことですの?」
「フローラには素敵なお相手がすでにおりますので、ビビアン様のご心配は必要ありませんわ」
含みを持たせてにっこりと笑みを返すディアナに
「ディアナ。それは……」
慌てたように首を振りながら、ますます顔が赤くなるフローラ。
幸せそうに見えるのは気のせい?
素敵なお相手って、まさか……
まだ名前は明かされていないはず。水面下でって……まさか。もうすでに?
「まあ、フローラ様にはすでにお相手がいましたのね。いったい、どなたなのかしら? 教えていただきたいわ」
「ビビアン様も意外とせっかちですのね。わたしの口からは言えませんわ。もちろん、フローラからも。両家の準備が整い次第、発表になると思いますから、もうしばらくお待ちくださいませ」
「……」
赤面した顔を隠したいのか俯くフローラは少し泣きそうな顔をしていたけれど、ディアナの言葉を否定はしなかった。ということは、話が進んでいるということ?
ディアナの自信ありげな不敵な笑みとフローラの反応に不安が押し寄せる。
メラメラと燃えるどす黒い炎が全身を包んでいった。
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