48 ビビアンside④

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「楽しみにしていてくださいね。分相応。そう、おっしゃっていましたものね。一つ、正しておきますわ。フローラは高嶺の花ですの。道端に咲いている誰でも摘めるような野花とは違いますからね。高嶺の花のフローラには高貴な方が似合う。そう思いませんこと?」  あんなに従順だったディアナがわたくしに牙をむく。  好戦的な色を湛えた瞳の奥には青い炎が見えたような気がした。ゾクッとした寒気が背中を伝う。 「そんなことは、な……」  ぎょっとしたフローラが口を挟もうとしたけれど、ディアナがそれを制した。 「自分の価値を見誤ったらいけないわ。フローラ、あなたは高嶺の花なのよ。だから、自信を持っていいのよ」  言い含めるようにフローラに言った後、ディアナは涼し気に扇子で顔を扇いでいる。 「そう思いませんこと? ビビアン様も高嶺の花ですものね。そうやすやすと手に入るものでもございませんものね」 「そうね。でも、フローラ様とわたくしでは同じ高嶺の花でも、全然、価値が違うと思いますわ」 「それは、そうですわね。高価な花だって種類によって値段が違いますもの。さて、どちらにより高い値が付くのか、買い手にしかわかりませんわね」 「ふふっ。面白いわね。比べるまでもなく、わかりきっていることだと思いますわよ。一目瞭然でしょう」  フローラなんかと同等などと言われて腹が立つ。引かないディアナにも腹が立つ。わたくしたちのやり取りを冷や冷やした様子で見つめているフローラにも腹が立った。
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