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「思うことは自由ですからね。ビビアン様もよく周りを御覧になった方がよろしいかと思いますわ。天を見上げているばかりではなく、時には下界を見ることもお勧めしますわ。案外、お似合いの宝が見つかるかもしれませんわよ」
「それは、どういう意味かしら?」
カチンときたわたくしは思わず言い返した。
まるで法外な宝を追いかけているとでも言いたげな言い回し。わたくしにはレイニー殿下は分不相応だとでも言いたいの?
辛辣な物言いにはらわたが煮えくり返る。容赦のないディアナ。いつもはもっとわたくしを尊重してくれるのに。
「そのままの意味ですわ。それとフローラのことはご心配には及びません。高貴な方がお相手ですからね。何も案ずることはありませんわ。高嶺の花は相応しいところで大切にされますからね」
フローラは喜びと不安と入り混じった複雑な表情で、涙をこらえているように見えた。それがかえって現実味を帯びていて、わたくしの焦燥を再び呼び起こした。
嘘よね。嘘でしょ。
そんなことがあっていいはずがない。
だって、レイニー殿下と結婚するのはわたくしよ。フローラでいいはずがない。
高嶺の花ってそんなわけないじゃない。
フローラは野花ですらなく雑草よ。粗末に踏みつぶされるそこら辺に生えている雑草。高貴のお方が手に触れるような高嶺の花なんかではないわ。
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