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「ディアナの目も案外、節穴なのね。がっかりだわ」
公衆の面前で怒りにまかせて感情をぶちまけてもいいことはない。
わたくしは公爵令嬢ですもの。
メラメラと燃える憎しみの心を抑えて、扇子の陰で泰然と構えて溜息をついて見せる。
「どう思われても結構ですわ」
「そうなの、残念だわ」
これは、事実上の決別なのかもしれない。
ディアナを失うのは痛いけれど、自分の意に反して同調できるわけがない。彼女はフローラの味方。わたくしに組することはないだろうということが嫌というほどわかったわ。
ここでも痛感させられる。わたくしの愚かさを……
わたくしにないものを持っているフローラに余計に憎しみが募る。
ぎろりと睨みつければフローラは血の気を失い震えあがる。
せめてわたくしに立ち向かってくるような気概でも見せれば、少しは気が晴れるかもしれないけれど、ただただ、ディアナに庇ってもらうだけ。
そんなひ弱な彼女に王子妃なんて務まらないわ。わたくしのように正々堂々と意志が貫けるような令嬢が相応しいのに。
本当にみんな見る目がない。お父様達でさえ、三男で満足している。
わたくしも低く見られたものだわ。
「そういうことですから、ビビアン様もご自分の結婚を第一に考えてくださいませ。幸せな結婚は目の前ですわよ。どうかお間違えなきように。ビビアン様の幸せを願っておりますわ」
ディアナが屈辱的なことを言い放つ。
彼女の慈悲とも取れる最後の忠告は、落胆と嫉妬に支配されたわたくしの耳を通りすぎていくだけだった。
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