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そして、現実は確実にやってくる。
お父様に呼ばれた。
ずっと保留にしていた三男との縁談。毎日のように攻勢してくるお母様を上手く躱して対応していた。それでも話はなくなることはなかった。
「そろそろ、ロジアム侯爵家との縁談の返事を聞きたいのだが、どうだね」
お父様がおもむろに話し出す。お母様は固唾を飲んで見守っている。緊張を孕んだ沈黙に肌がピリと痛んだ。
本音は断りたい。けれど、そんなことが出来るわけはない。
レイニー殿下との結婚はないとお父様から断言されている。その状況でロジアム家との結婚に否を唱えることは難しい。
「侯爵夫妻もこの縁談を喜んでいてね、是非にと言われたんだよ。ビビアンであれば申し分ないと。わしらもよい組み合わせだと思っている。だからこの縁談をうけてもらえないだろうか」
我が息子に申し分ないって、公爵令嬢のわたくしが? 侯爵といっても三男じゃないの。爵位もない三男。それのどこがわたくしに相応しいというの。
お父様もお母様も揃いも揃って、どうしてそんな男との結婚を勧めるの。
レイニー殿下との結婚の夢が破れてズタズタに切り裂かれたわたくしの心の傷から、どくどくと血が流れだす。
今までもいろいろな縁談があったけれど、これほどまで両親が押してくることはなかった。
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