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「終わったわ。何もかもが終わってしまった」
部屋に戻ったわたくしはソファに腰かける気力さえなくて、へなへなと絨毯の上に座り込んだ。
これでレイニー殿下との結婚の可能性はなくなってしまった。
この日が来ることは頭の中ではわかっていても、実際に事実を突きつけられると胸に来るものがある。
「お嬢様、どうなさったのですか?」
部屋に入ってきたエマが床にへたりこんでいるわたくしを見つけて駆け寄ってくる。腕を取って支えるとソファへと座らせた。
みっともないところを見せてしまったけれど、取り繕う気にもなれない。鬱屈した気分は晴れず沈み込んでいくばかり。ソファの背に体を預けて放心していた。
しばらくすると、何も言わず部屋を出て行ったエマがワゴンを引いて入ってきた。お茶の準備が終わるとテーブルに湯気の立ったミルクティーが置かれる。ミルクのほんのり甘い香りが、ささくれ立ったわたくしの心を少しだけ癒してくれた。
心を落ち着けるために、いつもより時間をかけてミルクティーを味合う。その間エマはそば近くで控えていた。
「エマ。わたくし、結婚が決まったの。あなたもついてきてくれるかしら?」
飲み終わったカップをソーサーに戻すとエマに話しかける。
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