48 ビビアンside④

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「おめでとうございます。もちろんです。お嬢様のためならどこへでもお供いたします」  喜びの声を上げたエマの表情は明るい。 「嬉しいわ。相手はロジアム侯爵家の三男なのよ」  笑みを浮かべて答えるとエマの顔が困惑の色に変わる。 「ロジアム侯爵家ですか? え? レイニー殿下の間違いでは?」 「間違ってはいないわ。わたくしが嫁するのはロジアム侯爵家の三男なのよ。お父様がお選びになったの」 「えっ? では、レイニー殿下は……」  意味が分からないとばかりにエマが聞き返す。  そうよね。わたくしとレイニー殿下は恋人同士。なのに、なぜ別の男性と結婚せねばならないのか、不思議に思うのも無理はない。 「エマ、あなたも貴族の令嬢ならわかるわよね。どんなに思い合っていても、時には別れを選択させられることだってあることを」   エマは子爵家の三女。貴族の結婚は政略で結ばれることも多い。そこに本人の意思など存在しないことだって、理解しているはず。 「そんな……」  がっくりと肩を落としショックを隠し切れない彼女。  殿下との幸せな夢物語を聞かされてきたエマには信じがたいことなのだろう。彼女の中では、困難を乗り越えて二人は結ばれると信じて疑わなかったに違いない。
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