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「仕方がないのよ。これがわたくしの結婚。レイ様とは永遠に結ばれない運命だったのよ」
どんなに焦がれても願っても叶うことのない恋。
これがわたくしの夢物語の結末だった。
「お嬢様。お力になれなくて、申し訳ありません」
エマはポロポロと涙をこぼしながら何度も謝る。エマのせいではないのに。一介の使用人がなせることは無いに等しいのに。
それでも嬉しかった。
わたくしのために泣いてくれる、無力な自分を嘆いてくれる。それだけでも気持ちが救われたようだった。
「いいの。その気持ちだけで充分よ」
わたくしの頬に涙が伝う。
エマの温もりに今まで我慢してきた思いが涙となって、堰を切ったようにあふれ出す。恋の終わりとこれから先の絶望と悲哀に打ちひしがれる。
実現しない夢を見ていたわたくしと嘘を真実だと思い込んでいるエマ。
現実と虚構の狭間でわたくしたちは泣き続けた。
そして、どのくらい経った頃だろう。
「フローラがいなければ、フローラさえいなければ、わたくしはレイニー殿下と幸せになれたのに」
ふと、こぼれ出たそれは、紛れもなく、わたくしの本心だった。
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