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49 波乱のあとで
「ねえ、ディアナ。さっきおかしなことを言っていなかった?」
課題がひと段落した頃合いで気になった事を聞いてみました。そこそこ賑わいをみせていたサロンも人がまばらになってきています。
「おかしなこと?」
ビビアン様が去ったあとのサロンの席で、ディアナが首をひねって真剣に考えています。
「ないわね」
思い至るところはないときっぱりと言い切るディアナに肩を落とす私。曖昧な言い方では伝わらないみたいだわ。
「あのね。私の結婚のことだけれど、何も決まっていないのよ。お相手なんていないのに、ビビアン様に嘘を言ったらいけないと思うわ。しかも高貴な方とかなんとか……」
高貴な方って、一人しか思い浮かばない。言っている自分が恥ずかしくなって、段々と声が小さくなってしまいました。
「いいんじゃないの? 時には、はったりも必要よ。ビビアン様にはそのくらい言っておかないとまた絡んでくると思うわよ」
「はったりって……でも、嘘はいけないと思うわ。ないものをあると言ってはご迷惑をおかけするかもしれないし」
巡り巡って、もしもレイ様の耳に入ったら? 事が軽くすまなくなる可能性だってあるのに。
「そう? あながち嘘でもないでしょう?」
「えっ?」
私は大きく目を見開きました。驚く私にディアナはクスクスと笑っています。
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