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「そうよ。あなたはもっと自分を誇っていいのよ。フローラの研究は国益を齎しているし、性格だって素直で優しくて純粋だし、容姿だって可愛らしいわよ。フローラはさしずめ森の奥に咲く野ばらというイメージね。朝露に濡れて瑞々しく咲いている可憐な野ばらよ」
「それは……ちょっと褒め過ぎでは?」
スラスラと賛辞の言葉がディアナの口から飛び出してきて、面食らってしまいました。
研究はともかくも性格だって気弱で言いたいことも言えずにしり込みしてしまう消極的な性格。暗い、根暗ってよく言われていたわ。
容姿だってビビアン様が大輪の薔薇なら私は道端のぺんぺん草よ。いえ、ぺんぺん草に失礼かもしれないわ。どこをとっても褒められるところなんてない。
自分の欠点はスラスラと出てくるのに、良いところはちっとも思い浮かばないわ。
「褒め過ぎって、褒め足りないくらいよ。わたしが言うのだから間違いはないわ」
胸を張って答えるディアナの顔は自信に満ちています。わたしのどこを見て断言できるのか頭を悩ますところ。
手放しで褒めてくれるのは友人だからということが大きいのでしょうけれど、嬉しい気持ちがないわけではありません。
でも、やっぱり褒め過ぎよね。
ディアナの半分でも誇れるところがあればいいのに。
「それで、レイニーとはどうなっているの?」
「えっ?」
自己嫌悪に陥って沈んでいるところに、レイ様の名前が飛び込んできて、180度転換した話題に思考がフリーズしてしまいました。
一瞬、何を聞かれたのか分からなくて、ディアナの顔を凝視します。
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